「尊厳死」と「安楽死」との違いを知ろう

ターミナルケアとは、終末期の患者のケアのことを指しており、具体的には痛みの緩和などが挙げられます。
終着点を意味する「ターミナル」のイメージがネガティブであることから、最近ではエンドオブライフケアと表現されることも少なくありません。
そんなターミナルケアは、治癒の見込みがなく、死が避けられない状況になった時、延命を目的とせず、残された時間を穏やかに過ごすことを目的としています。
1994年に日本学術会議は、患者本人が事前に尊厳死を希望していれば、本人の意思を尊重して延命治療を中止することを容認しており、それ以降、ターミナルケアは徐々に浸透してきました。

ただし、ターミナルケアが追求している「尊厳死」は、「安楽死」とは異なることを理解しておかなければなりません。
治癒の見込みがなく、死が避けられない状況になった時、苦痛から解放し、死期を早めるために医療者が人為的に何らかの措置を行う行為は、日本では嘱託殺人罪に問われ、違法行為とされています。
しかし、ごく稀に患者の希望があったからという理由で、医師による安楽死事件が起きており、こうした事件を契機に、「死ぬ権利は保証されるべきか」「自己決定権を法制化すべきか」という議論が日本でも起こっています。
とはいえ、法で定められていない以上、尊厳死=安楽死だという解釈をするのは避けなければなりません。

ちなみに、厚生労働省の世論調査によれば、自分がどのような最期を迎えたいかということを、元気なうちに周囲に意思表示をしている人はほとんどいないそうです。
そのため、ターミナルケアは欧米諸国に比べると、まだまだ認知度が低くなっています。
厚生労働省では、自分が望むターミナルケアについて国民に前もって考えてもらおうと、近年「人生会議」という名称で、意識の啓発を行っているようです。