日本のターミナルケアの現状とその要因

医療や介護の現場で取り組みが進められているのが、ターミナルケアです。
ターミナルケアとは、治療しても治る見込みがなく、余命が6か月以内と医師が判断した場合に、残りの日々を患者と家族が満足できるようにお世話することをいいます。
日本でターミナルケアの場として選ばれるのは、主にホスピスや緩和ケア病棟などですが、自宅での最後を希望する人には、訪問看護でも対応しています。
ただし、患者と家族、さらにはサポートする医療や看護師など、すべての関係者が満足できるターミナルケアを実現できるケースは、それほど多くはありません。
そのため、ターミナルケアの先進国である欧米をお手本に、ケアの質を高めていくことが今後は必要でしょう。

ところで、日本で充実したターミナルケアがなかなか実現できないのには、日本特有の考え方が背景にあると指摘する専門家は少なくないようです。
なぜなら、日常で「死」を話題にするのはあまり好まれず、できれば話題にしたくないという文化があるからです。
そのため、自分がどんな最後を迎えたいのかといった話し合いがあまりできていないケースが多く、いざターミナルケアが必要となった場合に、どんなことを優先すべきなのかが判断できなくなることがネックになっています。

それから、ターミナルケアは治療を放棄したというように見られ、本人の希望を優先した結果であっても、なかなか周囲に理解されず、親戚縁者から薄情だと烙印を押されることも原因になっているようです。
また、日本の法制度やターミナルケアの基準が明確になっていない部分もあるので、ターミナルケアを臨んだ患者がいても、なかなか医療の現場が積極的に取り組めないケースもあるため、その辺りの改善が今後の医療現場の課題の一つになっています。